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番外 東日本大震災6年 詩「潮の匂いは。」

■2017/03/11 番外 東日本大震災6年 詩「潮の匂いは。」
潮の匂いは世界の終わりを連れてきた

読み継がれる若者の詩

宮城の大学生 震災翌年につづる

津波、友の死、「絆」への疑念

 東日本大震災で被災した宮城学院女子大4
年の片平侑佳さん(22)=宮城県東松島市=が
震災翌年につづった詩「潮の匂いは。」が各
地で読み継がれている。日常を暗転させた津
波、亡くなった友への追慕、「絆」という言
葉への疑念……。「日々が途切れないという、
その当たり前を、少し疑ってみませんか」と
片平さんは問いかける。

 『潮の匂いは世界の終わりを
連れてきた』。あの日、自宅2
階で激しい揺れに襲われた後、
海沿いの松林がしなるように揺
れるのを見た。「津波が来る!」。
姉が叫び声を上げた次の瞬間、
水が壁のようになって家や車を
のみこみながらどっと押し寄せ
た。
 『潮の匂いは友の死を連れて
きた』。中学時代、ともに卓球
部で汗を流した心優しい女の
子。卒業前、ちょっとしたこと
でけんかし、疎遠になっていた。
『もう一度だけ笑いあって、サ
ヨナラを、言いたい』。市内で
は片平さんの自宅があった沿岸
の野蒜地区などで千人以上が亡
くなった。
 『潮の匂いは一人の世界を連
れてきた』。震災後、「絆」や「頑
張ろう日本」といった国民の一
体感を示す言葉が盛んに用いら
れる一方、がれきの受け入れを
巡り、各地で激しい反対運動が
起きた。『自分のことしか見えな
い誰かは響きだけあたたかい言
葉で僕たちの心を深く抉る。』10
代の心は激しく揺さぶられた。
 震災から1年余りが過ぎた宮
城県石巻西高3年の夏。あの日
からの出来事に「心の中でけり
をつけたい」と思いをぶつけた
詩だった。県高校文芸作品コン
クールでは最優秀賞を受賞。2
014年になって突然誰かがツ
イッターに投稿すると「多くの
人に読んでほしい」「心打たれ
る」といったメッセージととも
に、これまで2万人以上にリツ
イート(転載)された。
 詩の広がりは新たな縁も生ん
だ。詩に圧倒された三重県松阪
市の元高校教諭松浦良代さん
(69)は片平さんと交流を続け、
南海トラフ巨大地震の被害が予
想される三重県沿岸の高校で生
徒に詩を声に出して読ませる授
業を重ねる。
 声を震わせ、むせび泣く生徒
たちの姿に「災害を体験した同
世代の子どもたちが何を感じ、
考えたかを伝えることにこそ、
防災の大きな力がある」と感じ
たという。
 『潮の匂いは優しい世界だっ
た。潮の匂いは孤独な世界にな
った』。そう感じた震災から6
年。片平さんはようやく潮の匂
いに懐かしさも感じられるよう
になってきた。


「潮の匂いは。」全文

 潮の匂いは世界の終わりを連れてきた。
僕の故郷はあの日波にさらわれて、
今はもうかつての面影をなくしてしまった。
引き波とともに僕の中の思い出も、
沖のはるか彼方まで持っていかれてしまったようで、
もう朧気(おぼろげ)にすら故郷の様相を
思い出すことはできない。

 潮の匂いは友の死を連れてきた。
冬の海に身を削がれながら、
君は最後に何を思ったのだろう。
笑顔の遺影の口元からのぞく八重歯に、
夏の日の青い空の下でくだらない話をして
笑いあったことを思い出して、
どうしようもなく泣きたくなる。
もう一度だけ、君に会いたい。
くだらない話をして、もう一度だけ笑いあって、
サヨナラを、言いたい。

 潮の匂いは少し大人の僕を連れてきた。
諦めること、我慢すること、
全部まとめて飲み込んで、笑う。
ひきつった笑顔と、疲れて丸まった背中。
諦めた。我慢した。"頑張れ"に応えようとして、
丸まった背中にそんな気力がないことに気付く。
どうしたらいいのかが、わからなかった。

 潮の匂いは一人の世界を連れてきた。
無責任な言葉、見えない恐怖。
否定される僕たちの世界、
生きることを否定されているのと、
同じかもしれない。誰も助けてはくれないんだと思った。
自分のことしか見えない誰かは響きだけあたたかい
言葉で僕たちの心を深く抉る。"絆"と言いながら、
見えない恐怖を僕たちだけで処理するように、
遠まわしに言う。"未来"は僕たちには程遠く、
"頑張れ"は何よりも重い。
お前は誰とも繋がってなどいない、一人で勝手に生きろと、
何処かの誰かが遠まわしに言っている。
一人で生きる世界は、あの日の海よりもきっと、
ずっと冷たい。

 潮の匂いは始まりだった。
 潮の匂いは終わりになった。

 潮の匂いは生だった。
 潮の匂いは死になった。

 潮の匂いは幼いあの日だった。
 潮の匂いは少し大人の今になった。

 潮の匂いは優しい世界だった。
 潮の匂いは孤独な世界になった。

 潮の匂いはー。


2017.3.8.西日本新聞夕刊より


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